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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第4章 春の夢 四

 嘉一は赤児を見つけると、まろぶように走り、その腕に抱き上げた。
「お千寿お嬢さま―、ご無事で。良かった、本当に良かった」
 知らぬ者が見れば、お千寿を抱いて頬ずりする嘉一は、間違いなくお千寿の真の父親だと思っただろう。嘉一はお千寿の頬に頬ずりして、落涙していた。
 一方、嘉一よりやや遅れて走ってきたお須万は半狂乱であった。髪を振り乱し、美しい面を涙でぐしゃぐしゃにして号泣している。

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