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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第2章 春の夢 弐

 この世には本当に神や仏がいるのだろうか、と。もし、神さまや仏さまが存在するのならば、どうして、自分のように日々慎ましく懸命に生きている人間が辛い目にばかり遭うのだろう。
 三年前、おみのと太助を一辺に失い、今、また、漸くめぐり逢えた女との縁(えにし)さえ、無情にも絶とうとするのか。あの不思議な女―どう考えても狂っているとしか思えない女と思いがけず一夜を共に過ごしてからというもの、清七は女のことばかり考えている。

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