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花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第2章 春の夢 弐

 あれから半月余り、川のほとりの桜もとうに散り、江戸は眩しい新緑の季節になった。
 あの橋を通る度に、清七はあの夢のような一夜を思い出さずにはいられないのだった。
 菜の花が一面に咲く花の褥に横たわった女の膚が月の光に照らされ、夜陰にほの白く浮かび上がっていたこと、朧に滲んでいた春の月や雲母(きらら)のごとく煌めいていた桜の花びら、あの夜の情景の一つ一つがあたかも芝居の一幕を再現するかのごとく瞼に鮮明に甦るのだ。

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