テキストサイズ

花は月明かりに濡れて~四つの恋の花~

第2章 春の夢 弐

 自分の腕の中で泣きながらしがみついてきた女が忘れられない。
―お前さん、もう、どこにも行かないでね。絶対に私を一人にしないでね?
 捨てられようとする子猫のような眼で見上げてくる女を、清七はひしとかき抱(いだ)き、その丈なす豊かな髪を撫でてやった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ