“さくら”が散る前に…
第2章 彼女の瞳
俺が彼女を見つめているのに気付き 彼女は
「どうしたの?」
と 小首を傾げた
「いや……何でもない…!!」
俺は できる限りの精一杯の笑顔を向けた
すると彼女は
「ふ~ん そっか…」
と言って クルッと後ろを向き そして顔だけ俺の方に向けて
「その子ね 『クゥ』って言うんだよ?」
いきなり子ぎつねの名前を教えてくれた
(……でも…何で……)
「…………クゥ?」
俺が 不思議そうに子ぎつねの名前を繰り返すと
その子ぎつねが
「クゥーーン!」
と 喜んだ……ような気がした
そんな子ぎつねを見て 彼女はクスクスと笑い
「ねっ?その子の鳴き声が『クゥーーン』だから “クゥ”!!」
彼女はとても嬉しそうに教えてくれた
「あぁ~なるほど……」
俺は 子ぎつねを見つめ そして
「よろしくな!“クゥ”!!」
すると クゥは尻尾をパタパタと振って そして
「クゥーーン!!」
と 鳴いた