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ショートラブストーリー

第9章 貴史

俊明を追いかけて一階に降りると、おばさんが夕飯の支度をしていた。

「貴史くん、ごめんね。美夜子だけじゃなくて俊明まで面倒かけて」

「大丈夫ですよ。美夜子の方はもうほとんど終わったんで」

俊明の隣に座って勉強をみていると、俊明がクッキーをかじり、驚きの声を上げた。

「貴史にーちゃん、このクッキーめちゃうまっ!!」

手を止めず食べ続ける俊明に、美夜子が

「あー!!全部食べないでよ!!」

「何だよ!!ケチ!!」

「あんたが意地汚いの!!」

俊明から2枚だけ奪い取り、1枚を俺に寄越した。

「…あ、旨い。俺、甘いの苦手だけどこれは食べやすいな」

「へぇ…。たかちゃん、こーゆーのが好きなんだ」

ふぅん、とか言いながら食べてる。

俊明の宿題が終わる頃には、クッキーも全て無くなっていた。

「さんきゅー!!貴史にーちゃん頼りになる~!!」

「どうせあたしは役に立ちませんよ」

美夜子がふて腐れて呟くと、俊明が

「ほんとだよな~。貴史にーちゃんがほんとに兄ちゃんならよかったのに」

「はぁ!?あんたケンカ売ってんの?」

言い争ってる二人に呆れたように溜め息をつくと、おばさんがこっちを向いて

「貴史くん、何なら夕御飯食べていかない?」

有難い申し出だけど…

「ありがとうございます。でも、多分用意してあると思うんで…」

「そう?遠慮しなくてもいいのよ?」

おばさんは小首を傾げて微笑んだ。

親子って似るんだな。

そういう仕種が美夜子とそっくりで、何だか笑えて仕方なかった。

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