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ショートラブストーリー

第9章 貴史

瞬間的に眉を寄せて不快な表情をするも、俺を見てにっこり笑いながら

「あ、でも大丈夫!!これは美味しいってほめてもらったから」

「榊原に?」

「え…?何で?何か聞いたの!?」

焦ったように聞き返すから、やっぱり勘が当たってたと確信する。

そりゃあ、榊原にお墨付きもらったなら旨いんだろうよ。

けど…。

意を決してクッキーを口に放り込む。

美夜子の作ったチョコチップクッキーは、甘いだろうと予想していた俺を完全に裏切るものだった。

「旨い」

思わずこぼした声に、美夜子は両手を握りしめて歓喜の声をあげた。

「ほんと?たかちゃん、こーゆーの、好き?」

「何か…すっげーサクサク」

「うん。メレンゲ使ったんだ」

「チョコチップだからもっと甘いかと思った」

「うん。ビターチョコ使って甘さ抑えて、クルミ入れるとチョコの苦味が和らぐんだって」

にこにこ笑いながら、俺の感想に説明をし始めた。

そんなに嬉しいもんなのか?

「珍しいよな。美夜子、あんまり料理しないのに」

「あんまり、じゃなくてほとんど、でしょ?」

一応気を使ったのに、さらっと突っ込まれた。

「きっかけは…こないだのクッキー…かな」


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