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ショートラブストーリー

第5章 遥(はるか)

「今日はお疲れ様でした!!かんぱーい!!」

幹事の坂口くんの音頭で宴会が始まった。

毎年恒例の、新入社員の余興で大笑いしたり

賞品をかけてのゲーム大会があったり

ベタだけどそれなりに盛り上がって楽しめた。

「飲んでますか?」

瓶ビール片手に池上くんが来るまでは。



「水沢さん、木下さん、お疲れ様です」

「池上くんも飲んでる!?今日は泊まりだから飲みなよ?」

隣にいた千秋(千秋は木下千秋といいます)が声をかけた。

「いつも車だからって飲み会で飲まないもんね~、さ、どーぞどーぞ」

千秋が空のグラスにビールを注ぎ、池上くんに手渡した。

「わ!?木下さん!!俺が注ぎに来たのに!?」

「そのグラス空けないと、あたしのグラスに注ぐの禁止ね」

「…分かりました!!」

池上くんは一息で飲み干すと、千秋のに注いで、私の前に座った。

「…じゃ、私も」

池上くんが空けたグラスにビールを注ぐ。

「はい、乾杯」

「マジっすか…はぁ…お疲れ様です」

グラスを鳴らして二人で一気に飲み干す。

「何か…二人で後輩イジメしてません?


「うわっ!!苛めるなんて心外~!!ね~、遥」

「そぅそぅ。心置きなく飲めるように取り計らってるだけだよね~」

「先輩の愛じゃん!?さ、もう一杯どーぞどーぞ」

「そんな愛いりませんから!!」

とか言いつつ、千秋に注がれて笑いながら池上くんは飲んでいた。

諦めなきゃ…と思いつつも、目が追っちゃうんだよね…。

自分の諦めの悪さに笑いがこぼれる…と

「水沢さん、どうかしました?」

池上くんがこっち見てる。

「ううん、何でもない。…ちょっと酔ったかな?トイレ行ってくるね」

自然な流れを装って、私はその場から逃げた。



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