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ショートラブストーリー

第5章 遥(はるか)

自販機コーナーはちょっとした休憩室になっていた。

池上くんが冷たいお茶を買ってくれて、そのまま長椅子に座ってお茶をもらった。

…はぁ。美味しい。ちょっとスッキリした。

壁にもたれて、お茶のペットボトルを頬に当てて火照りを冷ましていると、池上くんがこっちを見てるのに気付く。

「…何?」

「のぼせたんですか?それとも体調悪いんですか?」

「のぼせたんだよ。元気だから。大丈夫」

笑みを浮かべて言ったんだけど、信じてないみたい。

「無理しないで下さいよ」

「…池上くんって、優しいよね」

「今気付いたんですか?…なーんて」

優しい、よ。ツラくなるくらい。

「それにしても…水沢さんって、仕事してる時はしっかりしてるのに、何で普段ぬけてるんですかね」

ふぅ、とため息混じりに告げられて。

…そんな風に思ってたんだ…

「え~!?ひどくない?」

「実際そうだから言ってるんです。さっきだって、俺がいたから良かったけど、変な奴ばっかりならどうなってたか…」

「あ…うん。そうだね…」

「ちゃんと張り紙で警告してあったんだから、普通なら気付きますよ」

「分かったってば。次から気を付ける」

私はため息ついた。

頭クラクラするし、池上くんに説教されて…最悪だ。

「水沢さんって、強がり過ぎですよ。いつも本当にヤバくなるまで頑張ってるし」

「え~、そんなに弱くないよぉ?」

「弱いとこ、見せてもいいんですよ」

ポツリと呟かれて、何だか悲しくて仕方なかった。

そんな事言われると、頼りたくなっちゃうじゃない!!

他に彼女いるのに。

中途半端な優しさは、ずるいよ…。




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