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寡黙男子

第1章 はじめの一歩から *亜紀乃の世界*

もう家についちゃう…


寂しいけど、今日は学と少し距離が縮まったから幸せ…。



「じゃあ…ありがと…学…」


「……………うん」



必要以上に“学”って呼んでみる。


なんか、3ヶ月目にしてやっとカップルっぽくなったかな。



って、あれ…?


バイバイしたら学はいつもスタスタ行っちゃうのに、今日は私をじっと見たまま動かない。



どうかしたの…かな…?



「…………亜紀乃…」



ポツッと小さな声で彼が呟く。


まだそう呼ばれるのは慣れないけど…
すごく…幸せ…



「なに…?」



「………………ありがと」



あれ?送ってもらったの私なのに。



「何が?」


ちょっと笑い混じりに応えたら、学はまた眼鏡を外して服の裾でレンズを拭いた。



「………………色々。」



色々…?



「…………じゃあね。亜紀乃。」


「あっ…うっ、うん…」



そして学は眼鏡をかけて、やっぱりスタスタと帰っていった。



────────亜紀乃…


彼の声が頭で鳴り響いたまま。



「学…」



私は、部屋で1人、そう呟いて、またニヤニヤしていた。


名前で呼び合う…


やっと初めの一歩を踏み出した、そんな気がした。




『はじめの一歩から *亜紀乃の世界*』【終わり♪】

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