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隠れて甘いkissをして

第1章 ツイてない日

立花が彼女に優しく電話をするのは、今に始まったことじゃない。


恋人同士なんだから、むしろ当たり前なことだ。


でも、この日の私は……なぜか自分の感情を抑えることが出来なかった。



「………受付嬢って、ぴったり定時に帰れるって言ってたよね。
残業が無いって羨ましいわ」



電話を切った立花に向かって、私は大袈裟に溜息をつく。



「それに、毎週自分の会社の前まで迎えに来させたりして。
いいご身分ですこと」



私の嫌みに動じることなく、立花はふっと笑った。



「まぁ、傍から見たらそうかもな。俺はもう慣れたけど」

「普通にお店の前で待ち合わせすればいいじゃない」

「会社を出た時に、俺が待ってると嬉しいんだってさ」

「何それ。単に立花を同僚達に自慢したいだけでしょ」



……彼氏と彼女の間に、口を挟んでどうするのよ。


そう心の中でツッコミながらも、私の口は勝手に動く。



「その毎日来る電話、面倒じゃないの?
夜だけじゃなくて、お昼とかもしつこくない?」

「………咲原」

「お気楽な女の子には、限度ってものが分からないのかな」

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