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息もできない

第15章 謝って欲しいわけじゃ

あー…幸せ
なんかこのまま溶けてひとつになっちゃいたい


ぼんやりと考えていると


「なぁ、直」


と声をかけてきた

「うん?」

「ーー俺の誕生日にさ、作ってくれた料理…食べたいんだけどまた作ってくれる?」


あ………

俺は体が強張るのを感じた


少しだけ
触れて欲しくなかったかもしれない


今は春陽がここにいるから特になにもなく過ごせているけどあの時に味わった悲しみがなくなったわけではなくて俺は黙ってしまう


「………」


春陽は俺の背中を宥めるように優しく撫でてくれる


「お願い。じゃないと俺、後悔で死にそうだから」

「え……?」


死にそう、って……


「せっかく俺のために用意してくれたのにあんなんになって……」

「でも……」


俺が渋っていると


「作ってくれないならゴミ袋の中から拾って食べる」


と脅しまがいに言われた


そんな、一回捨てたやつなんて食べさせられるわけないんだけど
それでもやっぱりなんだか気が乗らない

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