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片想いの行方

第33章 伝えたい想いを、あなたへ

「まったく、関係者ばかりで疲れるな。

間に合って良かった」



予選からずっと席を外していた新藤さんが、あたしの右隣りに戻ってきた。


そして、興奮して立ちあがるスイミングスクールのみんなに声をかける。



「ほらー!みんな座って!

蓮が飛び込むまでは騒いだら駄目だよ。

陽菜と美和ちゃんを見習って………


って2人とも大丈夫?」



はしゃぐ皆とは対照的に、陽菜ちゃんとあたしは石のように固まっていた。


その様子を見た新藤さんが笑う。




「あはは。

2人ともリラックスして。

2人の応援が何よりも蓮の力になるんだから、ちゃんと声出してね」



「は、はい………」



辛うじて返事をすると、新藤さんはふっと優しい顔をした。






……素敵だなぁ、新藤さん。



こんなに穏やかな新藤さんが、実はこの都大会で2度も優勝した凄い人だってこと。


ついさっき、陽菜ちゃんのお母さんから教えてもらうまで、私は知らなかった。




そんな人と兄弟のように仲の良い蓮くん。



次は、蓮くんがその頂点に立つ番なんだ。

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