
片想いの行方
第33章 伝えたい想いを、あなたへ
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大きな歓声が響く中、決勝の選手達が入場してきた。
「………………っ」
6レーンの前に立った蓮くんは既にゴーグルをしていて、離れているここからは表情が見えない。
1レーンの選手から、順番に名前がコールされていく。
「…すごいね、美和ちゃん。
一体どんな魔法を使ったの?」
「……えっ!?」
ふいに隣りで新藤さんが言った言葉に、私は振り向いた。
「つい1週間前までは、本当に危ないなと思ってたんだ。
いつでも冷静さを失わなかった蓮が、珍しく感情を水泳に持ち込んでたからね。
……だけど直前になって、何もかもふっきれた顔をして、戻ってきた」
……………!
胸がドキドキする………
あたしは新藤さんから目を逸らした。
「あ……あたしは何も………」
「そう?」
新藤さんはふっと笑う。
「 蓮が言ってたよ。
“ 香月が大切な事を教えてくれて、背中を押してくれた。
俺、今負ける気がしない ” って」
