
片想いの行方
第47章 探り合い
運ばれてきたグラスを合わせる。
入った時は高級感が漂ってるように見えたけど
お客さんは皆、案外カジュアルな格好をしていて、私もそこまで浮いていない。
生演奏のジャズが心地よく響いているけど
私は、その音色を楽しむ余裕は無かった。
「……こんな立派なところと掛け持ちしてたら、普通バレるよ?」
「ばれねーよ。
ここはボランティアだから」
ボランティア!?
「お給料無しなの?」
「まぁ、そういうことにしといて」
………はぁ?
「何それ、意味わからないよ。
本当は秘密で働いてるんでしょ?」
「さぁね。
人の年収探るようなマネするなよ。
悪趣味」
「なっ…!違うよ!」
口が悪いところは、高校時代から直ってないんだから!
モヤモヤした気持ちのまま、ビールを口に含むと
「やっと元気な声出したな」
ヒメがニッと笑った。
