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片想いの行方

第52章 その男、再起不能



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『とっくの昔に治っている』




ヒメが言い放った衝撃的な事実を、私はまだ半分も理解しきれていない。




その信じられない気持ちと一緒に


今までの2年間は何だったのか


どうして気付かなかったのか


悔やまれる疑問が頭の中を駆け巡っている。





だけど




「……………っ」




固まる一条さんを見下ろした、この時のヒメの後ろ姿が




突如現れた、たった1人のヒーローに見えて




私の胸は、確実に高鳴っていた。







「………お前、誰だ?」




一条さんが口を開いたので、ハッと我に返る。



「その診断書を持ってるってことは、社内の人間で間違いないだろうけど。

どこの部署にいる?」






ドクンと心臓が鳴る。




………ヒメ……!






「そりゃ~ズル休みしてるあんたは知らねーよ。

俺は先月入社したばかりだ」




ヒメは笑う。




「それに、悪いけど名乗ったところで意味がない。

あんたはもう、二度と会社には戻れないからな」

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