
片想いの行方
第52章 その男、再起不能
突然、リビングの入口から女の人の声がして
私と一条さんは同時に顔を上げた。
「………後で呼ぶっつっただろ」
ヒメだけは振り返らず、その人の言葉を背中で受け止める。
「いや~これでも大人しくエントランスの前で待ってたんだけど。
その男の所へ行こうとしてた、マリちゃん?って子が私のファンでさー。
合鍵持ってて入れてくれたんだよね~」
同じ女性とは思えない、小さすぎる顔に抜群のスタイル。
尋常じゃないくらい、煌びやかなオーラをその身にまとって
彼女は私の元へ近づいてきた。
「……まぁ、今のあんたたちの会話をその入口で聞いてたら
腹立たしくて待ってられなくなったってのが、本音」
……ショートカットを、ビシッとオールバックに固めた金髪は
あの頃と変わっていない。
「美和ちゃん、久しぶり。
いい女になったね♡」
「………………っ」
私と目線を合わせるように、しゃがみこんで
麗子さんはにっこりと笑った。
……雑誌で見るより、数千倍美しいヒメのお姉さん。
驚きすぎて、私は涙も出なかった。
