
片想いの行方
第53章 彼の心
…………ヒメ………!
ヒメはそれだけ言うと、またエントランスの外に向かって歩き出した。
「……何それ。
だったら最初から2つめの方を先に言いなさいよ。
口出した私がバカみたいじゃない」
ヒメの後ろ姿を見て優香さんがため息をつくと、麗子さんがニヤッと笑う。
「…ん~…
アイツがイライラしてんのは、別の理由っぽいわね」
「……え?」
2人の会話を聞きながらも、私は足を前に1歩踏み出す。
追いかけなきゃ。
……もう一度、彼に感謝の想いを伝えたい……
そんな私に、奈々さんが気付いた。
「いいよ、美和ちゃん行っておいで。
私も今回の天誅の全貌を知らないし、まさかお姉さんまでいらっしゃるとは思ってもみなかったけど。
美和ちゃん救出作戦の発起人は、紛れもなくヒメくんだよ。」
「………はい………!」
私は涙を拭いて、力強く頷いた。
そのまま走り出そうとすると
「美和」
後ろからアンナに呼ばれた。
「私、このまま週末まで実家にいるから、あとでゆっくり話せばいいんだけど。
……先に、どうしても伝えたくて」
私が振り返ると、アンナは静かに続けた。
「今日の事を、私に教えてくれたのは
蓮くんなの」
「………!」
「ヒメが美和を救い出すから、その後、美和を迎えてあげてほしいって。
そうしたらきっと、美和はもっと喜ぶからって。
……蓮くん、今日この場に来ることはできなかったけど
蓮くんも、今までずっと
美和の事を心配して、想い続けていたんだよ」
