
片想いの行方
第53章 彼の心
▼Side... ヒメ
マンションを出て、意味もなく駅と反対の方向へ足を進める。
冬の冷たい夜風が吹きつけて、辺りはすっかり冷え込んでいた。
………当初の俺のプランでは
束縛男を再起不能まで追い詰めた後
長い間苦しんでいた美和に笑いかけて、優しく迎えてやるはずだった。
だけど
一条の部屋に入り、奴を目の当たりにした瞬間から
少しでも気を抜いたら、この手であの男を絞め殺してしまいそうで
全てが終わってからも、その感情を抑えるのに必死で
優しく笑うどころではなかった。
「……クソ……!」
転がっていた空き缶を踏みつける。
………言いたいことは言ったし、結果美和を救い出したことに変わりはない。
過去に戻ることはできないから、今までの2年間を悔やんでも仕方ない。
そんなことは充分に分かっている。
それでも、2年もの間、あの部屋で美和が縛り付けられていたと想像するだけで
全身の血が逆流し、はらわたが煮えくり返って、気が狂いそうだった。
……俺は今まで何をしてたんだよ
何でもっと早く傍に行ってやれなかったんだ
俺の頭の中では、その後悔ばかりが駆け巡っていた。
