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片想いの行方

第57章 溢れる想い

▼Side... 蓮



「……蓮。 もう1度言って?」





飲みかけのカクテルをBARカウンターに置くと


彼女は目の前の夜景を見つめたまま、静かに口を開いた。





「バンクーバーからニューヨークに乗り継いで、急遽仲間のCAと便を交代してもらったの。

………日本に戻るまで、何十時間のフライトだったか

あなたなら当然分かるでしょ?」



「………………」






その質問に答えることができず、もう一度グラスを手に取ろうとすると


隣りから彼女の右手が重ねられた。






「蓮の帰国がクリスマスに間に合うって言うから、それに合わせて私も帰ってきたのよ。


こうして一緒に食事をするのも数週間ぶりだし、すごく楽しみにしていたの。


……こんな話を聞く為に、16時間も延長勤務したわけじゃないわ」




その声はいつものように穏やかだけど


常に笑顔で気丈な彼女の手が、微かに震えている。




………傷つけるのは承知の上で、伝えた。






「………ごめん」






俺はもう一度その言葉を口にする。





「勝手なことを言ってるのは分かってるんだ。






だけど、これ以上はもう一緒にいられない。






………ごめん」

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