
片想いの行方
第57章 溢れる想い
会計をして、BARを出る。
エレベーターを降りてビルの外に出ると、東京湾の上に広がる夜空が目に入った。
夜景が明るすぎて、星はひとつも見えない。
『蓮くんが海外の空の写真を、いっぱい送ってくれていたから
それが凄く嬉しかったの。
その写真を見るだけで、元気をもらえてたんだよ』
クリスマスツリーの前で聞いた美和の言葉が、胸に響く。
就職してからも、たわいもない話でごくたまにメールをしていたけど
美和が元気を無くしているように感じてから、不定期に送っていた各国の写真。
封印した想いは、星空を眺めてカメラに収める時だけ、そっと取り出していた。
誰にも気付かれないようにしていたけど
たった今、その想いを心の中に留めておくことができなくなった。
………逢いたい。
クリスマスの夜が終わるまで、あと2時間。
俺はコートのポケットから携帯を取り出した。
