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片想いの行方

第58章 忘れられない人

「アンナ、私ね。

蓮くんと初めてひとつになった時、すっごく痛かったの」



「………は?」





私の言葉に、アンナはぽかんと口を開ける。




「勉強を教えてくれるって言うから、蓮くんの部屋に行ったのに。

最初から襲うつもりだったって。

もう我慢できないんだよって。

硬派な蓮くんの言葉とは思えないくらい……」



「ちょ、ちょっと!///
何いきなりそんな初体験話をぶっちゃけるのよ。
高校時代の話でしょ!?」



「うん、10年も前だよ」






私はホットティーを机に置いて、ふっと笑う。





「……でも、私にとっては今でも鮮明に思い出せるの」



「…………!」



「それだけじゃないの。


蓮くんとデートした場所とか、一緒に聞いた曲とか。


蓮くんの言葉も、声も、笑顔も………」






………バカみたい。



自分で言いながら、本当にそう思う。




普通に楽しい大学時代だった。



大学でも会社でも、それなりに出逢いはあったし、いいなって思う男性もいた。



だけど、その度にどうしても彼の事が頭に浮かんで、心を締めつけて



誰かと付き合う以前に



彼以上に誰かを好きになることは無かった。







……蓮くんと恋人同士だったあの1年は




私にとって宝物のような、幸せな時間だったから。

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