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不器用なくちびる

第20章 【春菜 14才】

……………………

文化祭を約2週間後に控えたある日
私は橘に呼び出されていた。
一応トイレで身だしなみを整えてから
行っちゃったりする私。

1年前のことで、それぞれ栞に対して
責任を感じてた2人は、たまに会っては
いじいじと栞の話とかしていて…
どうせまたそんな話なんだろうけどね。

橘も私もこの1年、栞との間にできた
溝を何とかしたいのに
出来ていなかった。


「香山のことなんだけど。」


「えぇえぇ、そうですよね!」


わかってたよ…そんなこと。


「……?
香山が、イギリスにピアノを勉強しに
行くって…10月からもうここには
来ないって。お前…何か知ってる?」


「マジで?!栞が〜?
10月なんてもうすぐじゃん!
間違いじゃないの?」


「いや…
姉貴がピアノに進んでるだろ?
それで、先輩が話してたらしくて…
中学から海外行くのって珍しいし
香山に間違いないと思う。」


「……そもそも栞、
ピアノなんて弾けるの?」


「小さい時からすげ〜おばさんに
習ってたんだよ。
で、そのおばさんが講師してるって
言ってたのが確か同じ学校だし…」


「…ほんとっぽいね。
ははは…水くさいな。」


「まぁ、な。でも無理もねぇよ…」


「ん、そだね…」

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