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不器用なくちびる

第22章 【椎名 16才】

✳︎桧奈side✳︎

始まりは夜中に聞こえてきた
うめき声だった。


「…ゆ…んん…みゆ…どこだ…みゆ…」


お父さんが連れてきた
イケメンだけどおっかない目をした男…
私はハッキリ言って苦手だ。

でもこの声、普通じゃないでしょ…

私は恐る恐る
椎名の部屋のドアを開けた。

するとそこには、窓にもたれかかって
座ったまま夢にうなされている椎名が…

え、どうしよう…

私が戸惑っていると、いつの間にか
後ろに立っていたお父さんが
椎名の部屋にそっと入っていき…
椎名の手を握ったのだ。


「…みゆ…みゆ……………………」


お父さんの手を握りながら
スースーを寝息を立てて
床に崩れた椎名を残し
私はお父さんに促されるように
して部屋を出た。

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