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不器用なくちびる

第22章 【椎名 16才】

あぁ〜っ!もうやってられっか!
生まれ変わるなんて俺にはもともと
無理な話だったんだ。
どうせ俺は…どうせ…

俺は気付いたら長い階段の途中の…
おやじさんに拾われた
あの椅子のある場所に辿り着いていた。

おやじさんの椅子は
町のあちこちにある。
おやじさんが無償で作り
許可をもらった場所へ置いてるんだ。
おやじさんは言っていた…


「歩き疲れ、走り疲れて…
誰でもひと休みしてえ時があるだろ?
そんな時、人は椅子を探すんだ。
ひと休みして…痛かった脚が癒えた頃
また立ち上がってみると
不思議と心も軽くなってんだ。
…人生も同じだろ?
俺は何も出来ねえ小さな人間だけど、
俺の置いた椅子でいつか誰かが
助けられるかもしれない…
そう思ってな。」


俺もこの椅子に助けられたんだな。

おやじさん…
あんたカッコイイよ…
俺、やっぱりあんたみたいに…

……………………

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