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不器用なくちびる

第10章 別離

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9月に入って、校内は文化祭の準備で
放課後も賑やかになった。

私のクラスは合唱をする。
今日も今から体育館で練習があって、
私は一人ドキドキしていた。

ピアノを担当するのは春菜ちゃん。

そして…
指揮者は吉井くんだ。

そう。私と春菜ちゃんと吉井くんは
2年生で同じクラスになった。
と言っても私は相変わらず2人と
仲良くなれてはいなかったけど…

春菜ちゃんとは挨拶はするし、
話をすることはあったけど…
前みたいにはなれなかった。
そういえば私、春菜ちゃんと大好きな
ピアノの話すらしたことなかったな。

そして吉井くんとは全くで…
傷付くのが怖くて近付くことすら
出来なかった。何かを知ってるんじゃ
ないかって思いが私を臆病にしていた…

でも、合唱してる時は
彼の姿をずっと見ていられる。
誰にも迷惑かけなくて済むし、
ジャマもされない…

私は練習の度に、吉井くんの姿を
一生懸命、目に焼き付けていた。

なぜなら、この学校に通うのも
あと2週間で終わりだったから…

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