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不器用なくちびる

第10章 別離

私にとってこの1年は、
とても穏やかなものだった。

相変わらず仲の良い友達は作れなかった
し、寂しくないと言ったら嘘になるけど
…これ以上傷付くこともない。

そんな冬眠の熊みたいな毎日を
送っていた時、大好きなあのヒトが
私にある提案をしてくれた。

小さい頃からピアノを教えてくれた
美姫おばさんは、今イギリスにある
音楽学校で講師をしていて…
子供のいないおばさん夫婦は、一緒に
イギリスで暮らして、その学校に
通わないかと言ってくれたんだ。

お金がかかる話だけど…
一流大学にピアノ留学するのとは違い
何とかなる範囲だから、栞の好きな
ようにしなさいと両親は言ってくれた。

みんな私を心配してくれてるんだよね…

私は迷わず、決めた。

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