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殺人鬼の棲む島

第32章 4日目 昼下がり 黒鵜館大浴場

「もはや安全なところなんてどこにもないのね。私は嫌だわ、お風呂で殺されるなんて」

紫響は肩を抱きながらおぞましげに呟いた。

「そりゃ誰だって嫌じゃろ……」

「私はどうせ死ぬなら優雅に美しく死にたいわ」

誰も紫響に突っ込めなかった。
こうも無惨な死体ばかり見せられ、全員の感覚は麻痺していた。

紫響の『美しく死にたい』という悪趣味な言葉は意外とみんなの心に染みた。

ここまで殺人が続き、生き残れる自信がなくなってきていた。

いつも取り乱す望ももう泣いていなかった。

ただ黙ってじっと何かを考えているかのようにみじろっぷの亡骸を見詰めていた。

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