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殺人鬼の棲む島

第38章 5日目 朝 黒鵜館リビング

リビングには紫響がかけたレコードが優雅に奏でられていた。

今のセレクションはショパン『別れの曲』。

ブルーチーズを口に運びながらワインで喉を潤す紫響は絵画から切り取ったような美しさを魅せていた。

「このままずっとみんなで一緒になって集まっておればいい。迎えの船が来るまでな」

京茶屋が呟く。

誰一人として勝手な行動は許さない。

全員が全員を監視する。

裏切りは許さない。

殺人鬼が誰であるとか、殺人鬼を捕まえるとか、ましてやいたちを退治するとか、そんなことはもう彼ら彼女らにはどうだってよかったのだ。

生きて帰る。

それだけだった。

時計の針がいつもと変わらぬ速度で動く。

望はじっとその動きを見詰めていた。


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