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「再会」と呼べる「出会い」

第4章 兄と弟

野球部か…懐かしいな

「しばたーっ!!走れーっ!!」

「すげ、勝ってる!」

「お!隠土、悪ぃな
 返しに行くとか言っといて」

「気にしないで下さい
 俺の方が手、空いてるんで。」

部活も終わったし、な。
俺が顧問を務める事になった料理部は
人数は少ないが濃いメンツが揃っていた。

まさかあの子に再会するなんて…。



俺には誰にも言えない力がある。
…死んだ婆ちゃんだけは知ってたが
両親は知らない。

俺には身体についた傷が
黒くなって見える。
また、身体に手を当てる事で消すことが、
つまり
怪我を治す事が出来るのだ…。


『誰にも言ってはいけないよ。
 勿論お父さんとお母さんにも。
 医者の二人が聞いたら
 ひどく混乱してしまう』

両親がバリバリ共働きで、
婆ちゃん子だった俺は
素直に言うことを聞いた。

友達の怪我を治す時も、
直接にはせず、
ある程度(消毒とか絆創膏とか)
治療が終わってからにした。

……

大学に行って、
家を離れている間
婆ちゃんは急な心臓の病で死んだ。

俺はこの力を
肝心な時に役立てる事が
出来なかった。

……

彼女、佐伯さんが
あの時黒くなっていた場所は


『忘れて下さい』


…彼女はそう言った。

これは簡単な問題じゃない。
なんとか、してやらないと。

会ったばかりだが
俺は彼女を助けたいと思った。

生徒だから

まぁ、それもある。

しかし
何故だか分からないが
他人のような気がしない。

…妹でもいたら
こういう気持ちになりそうだな。

生憎俺は、一人っ子だが。

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