テキストサイズ

「再会」と呼べる「出会い」

第1章 苦過ぎた初体験

「俺ずっと佐伯の事が気になっててさ
 なー頼むよ。絶対大事にするし!
 この通りっ!!」

そう言って私に頭を下げた
優司先輩は私達の一個上。
アイドル並みのルックスと明るい性格で
とても目立つ先輩だった。
沢山の女子が憧れていたし、
文化祭ではミスター酉校の
ダントツ一位だった。


卒業式が終わって、
学校の昇降口付近では
沢山の生徒や先生が
それぞれの別れを惜しんでいた。

勿論優司先輩も沢山の生徒に
囲まれて別れを惜しまれていたようだ。


私は…

優しかった部活の先輩に
今までお世話になった感謝の気持ちを
どうしたら上手く伝えられるか…

頭の中は
大好きな先輩と別れる寂しさと
肝心な時に上手く言葉が出ないもどかしさ
でいっぱいになっていた。

だから、人混みをかきわけるように
私に向かって歩いてくる彼の存在には
すぐには気付けなかった。

「先輩方!
 今まで本当にありがとうございました!!
 教えて下さった沢山のレシピ、
 それに料理の楽しさはしっかりと
 後輩達に伝えていきたいと思います!」

「ミカティ、部長、任せたわよ!」
「美味しいもの、沢山作ってね」

「はいぃ~っ」

感極まって涙が出てしまった、その時

突然肩を叩かれ、私は振り向いた。

「俺に食わせてよ
 佐伯の作る美味しいもの」

「え」

なんで?優司先輩が…?
何人かの生徒が一斉にこちらを見る。
主に女子 視線がチクチクと刺さる。

前を開けたブレザーに、
ボタンは付いていない。
ネクタイも、していない。
それどころかYシャツのボタンも
見える範囲には付いていない。

学校イチモテるってことは私も知ってる。
今日は沢山告白されたんだろうな。

…?
私この人と 接点ないよね。

優司先輩が真っ直ぐ私を見ている。
なんで?

なんで なんで なんでっ?!

彼の友達らしき男子の先輩が
「行けーっ優司!!」
「告れっ!」

なんか訳の分からないことを言っている。

なに?

「佐伯ミカさん 俺と付き合って下さい!」



何がおきたの?

世界が突然止まってしまったんじゃないかと
誰かが時間を止めたんじゃないかと


だって私

今優司先輩とキスしてる。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ