テキストサイズ

「再会」と呼べる「出会い」

第20章 見送る人

客観的に見れば
やはり俺は、教師失格だと思う。


「…はぁ」

「晴一君も
 いつか由芽ちゃんと“そう”なるよ」

「え いや俺は…」

そんな事を
全く考えていないと言えば嘘になるが、
現実、それを行動に移す事も、
思うことも許されないわけで。

「思い合っていれば
 お互いの全てを求めたくなるのは
 自然な事だよ」

マスターがコーヒーを
カップに注ぎながら微笑む。

間接照明に照らされた店内に、
客は俺と、
奥の席で談笑するカップル、
窓際で静かに会話する老夫婦、
一心不乱に
隅の席でペンを走らせている男性。

「一度学校に戻ろうかな」

飛び出して来たきり、
何もかもがそのままだった。
その時は部活中で、
生徒達が調理をしている最中。
ガスコンロを使っていたので、
もう一人の家庭科教師である
奥井先生に
管理・指導をお願いしてきたのだ。
慌てていたので、
返事も待たずに
押し付けたようなものだから
悪いことをしたと思う。

「学校の事なら心配ないよ
さっき茜ちゃんから連絡が来てね
部活は何事もなく終わったって
片付けも松井君が手伝って
くれたそうだよ」

「松井先生が?」

「松井君も家事をする子だから
綺麗にしてくれてると思うよ」

「 お礼しないとな…」

松井先生が家事か。
キッチリしてそうだな…。

それに園田とも
ちゃんと線引き出来てるんだろうな

俺と違って


そんな風に
わが身を振り返っては
また、情けない気持ちに
捕われそうになった時



ガ チャ…

すぐ奥の、
俺達がさっきまでいた部屋の
ドアが開いた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ