テキストサイズ

エール

第1章 リーヴル

「これ、何の本?」


和希君が、本を覗き込む。


「えぇっと、シャーロックホームズって知ってますか?」


「あ、何か聞いたことある。読んだことはないけど...。」


そう言って、私の抱える本をしげしげと眺めた和希君。


「そうなんですか。...面白いですよ?」


「へぇ~......って、もうこんな時間!?」


壁にかけられてある時計を見上げ、焦りだした和希君は、私にじゃあ!と手をあげ、走り去っていった。


...和希君、何で図書室に居たんだろう。本読んでるところなんて見たことないんだけどなぁ......。



首をかしげながら、私も時計を見上げる。


...あ、もう閉館の時間だ。


和希君に取ってもらった本を、宝物のように抱きしめ、私は帰り支度を始めた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ