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エール

第1章 リーヴル

とりあえず顔の火照りを冷まそうと、奈帆が起きないようにそっと片付け始める。


落ちたプリントの半分近くを回収し終えたとき、教室の後ろのドアが突然開いた。



「うわあああああっ!?」


「なななななにぃっ!?」



思わず情けなくも悲鳴を上げてしまった俺と、その俺の声に反応して飛び上がった………………………真帆。



「って、何だよ、真帆かよ………。びっくりさせんな………。」


「は!?何、それ。あたし普通に入ったでしょうが。ふつーに!あれ以上どんな入り方があるっていうのさ!」


奈帆と同じ顔、同じ声で怒鳴っている真帆は、すごい面白い。本当に見分けがつかない。



「あ~。すまんすまん。俺が悪うございました~。」


「…ものっすごい腹立つ言い方ね。誰にでもそうなの?あんた………。よくそれでモテてるよね。不思議でしかたないわ~。ほんと、みんな見る目ないよね。」



別にモテてはないが。

それに、誰にでもな訳がない。


「…あれっ。お姉ちゃん寝ちゃってるじゃん。あ~らら、珍し。写メっとこかな~。」



と、真帆がさりげなく俺が隠すようにして立っていた、奈帆の姿を見つける。



しかも、ゴソゴソと鞄を漁ってスマホを取り出した。



…っていうか、こいつ写真撮る気か。


「…そうだよ。」


「!?今……」


こいつ、俺の心の声読んだ!?


「いや、独り言で心の声とやらはダダ漏れですよ、はい。」


なっ。


そんなに俺、独り言激しかったのか!?


うわああああああああ~!!

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