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闇の王と光の騎士

第13章  魔界争乱

霧里は摺り足で少しずつ櫻啼との軸をずらす。

視線は常に櫻啼に焦点をあわせているが、真の狙いはその裏の主幹研究員であることは一目瞭然であった。

「小賢しい……」

下手に動けば研究員に危険が及ぶ上にワクチンまで燃やされる危険性もある。

「どうしたの、サタンさん? さっきまでの勢いは?」

「どうやら魔導アカデミーとやらは挑発の練習をしていないようだな……下手すぎて逆に冷静になれる」

暗殺者の射程圏内に入らないように櫻啼も軸を動かす。

動きが小さい割に緊迫したやり取り。
一秒が長く感じられる濃縮された時間が充ちていた。

その緊迫を破ったのは霧里の方だった。

少しずつ移動していた霧里は足元にあった缶を勢いよく蹴った。

「ッ……」

缶は櫻啼に向かい、真っ直ぐ飛んだ。



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