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♡*:。.rena's world story.。:*♡

第16章 ★行かないで

RRRRRRRR………



エントランスを抜けて、ビルの外に出たタイミングで


もう一度携帯が鳴った。


歩きながら着信画面を見て……その名前を確認すると


ゆっくりと、耳へと運ぶ。




『俺の携帯、お前の着歴で埋まったぞ』

「…………」

『何の為の留守電だと思ってるんだ。
用件残せよ』




………いつもと変わらない、嫌味を込めた低い声。


やっと繋がったその電話の向こうから、同じく外であることを示す雑音が聞こえる。




『ヒメ? 聞いてるのか?』




タクシーが流れる大通りの手前で、俺は足を止めた。




「………蓮」


『お前のイタ電の5分後に、ヒカルから連絡があったんだ。

話があるからって会社の下まで来てて。

だけど今、降りてみたら……』


「ヒカルは悪くないんだ」




3日前、俺と美和を交互に見つめて


嬉しそうに笑ったヒカルの顔が浮かんでくる。




『………え?』


「憧れる相手は、姉貴じゃない。

だから、自覚が無いまま似ちまうんだよ」

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