LAST SMILE
第10章 知ってしまった痛み
*
「麗華?なんで病室に入ってないんだよ?」
しばらくして、亜貴が戻ってきた。
あたしは顔を上げて、亜貴の顔を見た。
「麗華・・・?」
「あのね、祐兎が・・・
もういいから亜貴と一緒に帰れって」
「・・・そか。目覚ましたんだな?」
あたしはゆっくりと頷く。
やばい。
また泣きそうだ。
亜貴は息を一息つくと、
あたしの頭を撫でた。
「帰ろう。麗華。あいつは大丈夫だよ」
あたしは弱々しく立ち上がって、
亜貴に手を引かれて歩いた。
病院の廊下は、
冷たくて、すごく長い。
鼻につくような、消毒か何かの匂いが漂っていて、
あたしは息苦しさを感じた。
病院の外に出て、亜貴はゆっくりと、
あたしの歩幅に合わせて歩いてくれているように思えた。
「なぁ、麗華」
「・・・」
「モッチーから、何か聞いたか?」
あたしは黙っていた。
唇を噛み締めて、
ただじっと、堪えていた。
口を開けば、
意味も無く涙が溢れてきそうだったから。
亜貴はそんなあたしの様子から察したのか、
歩きながら話を続けた。
「あいつ、心臓病なんだ。
俺とあいつは小さい頃からの幼馴染で、
だから俺だけはあいつの病気のこと、よく知ってた」
そうだったんだ。
2人はそんな昔から仲良いんだね。
だから、亜貴はあんなに冷静で、
対処の仕方も知ってて、
誰よりも祐兎のことを配慮してあげられたんだね。
「あいつはさ、親がいねぇから、
だから一人ででっかい家で暮らしてる。
中1の頃に両親、病気で亡くなったから、
そのショックは大きかったんだ」
次々と出てくる、あいつの過去。
あんなに、冷静で、
あんなに自由な感じがしたのに・・・。
「両親、心臓病でさ、だから自分も、
死ぬんだなって、そう悟ってしまった」
「・・・・・」
「どんどん、荒れていくあいつが、
突然俺に言ったんだ。
“バンドをはじめたい”って」