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LAST SMILE

第10章 知ってしまった痛み










「麗華?なんで病室に入ってないんだよ?」




しばらくして、亜貴が戻ってきた。


あたしは顔を上げて、亜貴の顔を見た。


「麗華・・・?」


「あのね、祐兎が・・・
 もういいから亜貴と一緒に帰れって」


「・・・そか。目覚ましたんだな?」


あたしはゆっくりと頷く。


やばい。


また泣きそうだ。


亜貴は息を一息つくと、
あたしの頭を撫でた。



「帰ろう。麗華。あいつは大丈夫だよ」



あたしは弱々しく立ち上がって、
亜貴に手を引かれて歩いた。



病院の廊下は、
冷たくて、すごく長い。



鼻につくような、消毒か何かの匂いが漂っていて、
あたしは息苦しさを感じた。



病院の外に出て、亜貴はゆっくりと、
あたしの歩幅に合わせて歩いてくれているように思えた。






「なぁ、麗華」


「・・・」


「モッチーから、何か聞いたか?」




あたしは黙っていた。


唇を噛み締めて、
ただじっと、堪えていた。



口を開けば、
意味も無く涙が溢れてきそうだったから。




亜貴はそんなあたしの様子から察したのか、
歩きながら話を続けた。





「あいつ、心臓病なんだ。
 俺とあいつは小さい頃からの幼馴染で、
 だから俺だけはあいつの病気のこと、よく知ってた」




そうだったんだ。


2人はそんな昔から仲良いんだね。


だから、亜貴はあんなに冷静で、
対処の仕方も知ってて、



誰よりも祐兎のことを配慮してあげられたんだね。





「あいつはさ、親がいねぇから、
 だから一人ででっかい家で暮らしてる。
 中1の頃に両親、病気で亡くなったから、
 そのショックは大きかったんだ」







次々と出てくる、あいつの過去。



あんなに、冷静で、
あんなに自由な感じがしたのに・・・。




「両親、心臓病でさ、だから自分も、
 死ぬんだなって、そう悟ってしまった」



「・・・・・」





「どんどん、荒れていくあいつが、
 突然俺に言ったんだ。


 “バンドをはじめたい”って」





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