LAST SMILE
第10章 知ってしまった痛み
「俺はメンバーを集めて、高1の冬、
Blue skyを結成した。
それからは少しはまともに学校も行って、
不規則な生活をやめたんだ。だけど・・・」
Blue skyは、祐兎が作ったんだ。
あいつは、
何を思ってバンドを始めたんだろう。
わからないけど、だけど、
バンドを始めたことが、
不安定な祐兎を支えてきたんだなって思った。
「喉を痛めてから、また、荒れたんだ。
酷かったよ。もう手に負えないくらいでさ。
心臓に悪いっていうのに、煙草も吸うし、
過度な運動も、わかってるのにあいつ、
わざとやるんだ」
悲しそうに話す亜貴。
亜貴は、
どんな思いで祐兎を支えてきたんだろう。
メンバーの中で自分だけが大きな秘密を知っていて、
それを誰にも相談できずに一人で・・・。
この2人の絆は相当なものなんだろうなって思う。
祐兎には、
亜貴がいてくれてよかったなぁって、
今思った。
亜貴はあたしの方を見た。
「でもさ、あいつ、
麗華が入ってきてから徐々に変わり始めた。
多分、麗華があいつの新しい支えに
なりかけてるんだって思うよ」
「え・・・?」
「だから、
あいつの支えになってくれないか?
あいつらには黙っておいて、
あいつが苦しそうなときに
そばにいてやってくれないかな」
あたしが・・・あいつの支えに?
それは、
あたしなんかに出来ることなのかな?
もし、あいつを傷つけてしまったら?
もし、あいつの重荷になったら?
色んな事が頭の中を駆け巡る。
あたしは何も言わずに、
ただ亜貴と繋いでいる手を強く握った。
亜貴はそれに気づいて、静かに苦笑した。
「ん。サンキュ。麗華」