LAST SMILE
第16章 なんだよ、って。
*
「え・・・」
あんまり静か過ぎて、
中の会話が全部聞こえてしまう。
そんな中、聞こえた言葉に、
あたしははっと顔をあげた。
―バンド、やめるわ―
何?
どうして?
なんでやめなきゃいけないの?
祐兎はあんなに、
あんなにバンドが好きなのに・・・。
「あ、藤堂さん!?」
あたしは走った。
とにかく、逃げたかった。
聞きたくなかったの。
そんな、弱々しい、
祐兎の声を・・・。
夢中で走って、
今どこにいるのか、場所も分らなくなって。
それでも走った。
振り切りたかったの。
この、どうしようもない感情を。
ねぇ、今年最後のライブは成功?
ねぇ。祐兎・・・。