テキストサイズ

LAST SMILE

第18章 最後の歌




・・・・・・・・・・・・・・・・・








朝が来て、
雪はとっくに止んでた。



どうやって、
家に戻ってきたのかわからない。



気付くとあたしは、自分の部屋にいた。



カーテンを開ける気力もなく、
日の光はそれによって遮られた。




お昼が過ぎて、
ノックをする音がした。






「麗華・・・?大丈夫?」


お母さんの声が扉の向こうから聞こえた。


返事をしないで、
そのままボーっと床を眺める。



「種田くん、きてくれてるわよ?」


お母さんがそう言うと、
扉が開いて、亜貴が部屋に入ってきた。



喪服を着た、
大人びた亜貴の姿がそこにあった。






「麗華・・・。落ち着いた?」



頷くことも、
返事を返すこともできない。



ただ、じっとそこにいるだけだった。



亜貴はゆっくりと床に座ると、
ベッドの上にいるあたしを見つめた。







「今夜、通夜だぞ・・・」


「・・・・・・」


「いけるか?」


「・・・・・・」








あたしが黙っていると、
亜貴は静かに息をついてあたしのそばに寄った。



リストバンドをしていないその手首を
そっと持ち上げる亜貴。




あたしは初めて亜貴の顔を見上げた。



亜貴と視線が合う。




ダメだ。



メンバーに会うと、
どうしても思い出される。





その後ろ手に、
あの人の幻影を・・・。






何十時間か前までは、



一緒にいたあの人の温もりを・・・。



「麗華・・・」


手首の傷痕を、
そっと撫でる亜貴。



「自分を、責めるなよ?
 あいつは・・・あいつの意志で・・」



亜貴がそういいかけたとき、
涙が溢れた。




それは自然と頬を伝って一筋流れた後、
とめどなく溢れてきた。





ストーリーメニュー

TOPTOPへ