LAST SMILE
第3章 新しいBlue Sky
「歌えよ。メロディー適当でいいから、
この歌詞つけて」
ホラ、と紙を渡されて見ると、
すでに歌詞がずらずらと並んであった。
あたし、バンドはコピバンだったし、
ボーカルだったわけじゃないから、
歌に関してはほんとに素人なのに・・・。
あたしが困っていると、祐兎が煙草をやめていった。
「はよ歌えや、ボケ」
何なのこいつ。
てか、なんでちょいちょい関西弁なの?
あたしをほって、祐兎は曲の出だしを弾き始めた。
それにのせて、みんなも自分のパートを弾き始める。
待って、待って!!
あたし、歌とか本当に無理だから!!
って、言っても聞かないか・・・。
どうしよう・・・。
*
さっきからみんなは前奏部分を何度も繰り返していた。
祐兎はイライラしながら面倒そうにギターを弾き、
他のみんなは怒ってはいないものの、
不思議そうな、心配そうな顔であたしを見ていた。
「おい」
祐兎が途中でそう話しかける。
パニックになって必死に歌詞の紙に
かじりついていたあたしは祐兎の顔を見た。
「歌詞、つけなくていいからメロディーだけつけて歌え」
歌詞・・・つけなくていいの?
でもそれじゃあ・・・。
「え・・・?」
「思ったとおりに鼻歌でもいいからやれよ」
再び前奏が始まる。
祐兎の、魅力的なギターソロ。
あたしは深く深呼吸をして目をつぶった。
なんでかな?
ムカつくはずなのに、大嫌いなはずなのに、
あの蒼い瞳に捉えられると、安心してリラックスできた。
歌が入るのは、
亜貴のベースが独りでに踊り出した時・・・。
(今だ!!)