LAST SMILE
第4章 ふさわしいあたし
*
屋上へと駆け上がる。
歌詞カードを持って。
思い扉を開けると、そこには亜貴がいた。
ベースを弾いて、だるそうに目を閉じていた。
「亜貴」
あたしが話しかけると、ぴたっとベースの音が止んだ。
「はよ」
眠いのかな?
目を開けてるのがやっとって感じがする。
「眠いの?」
「や。別にそうでもねぇけど?」
「なんか、だるそう・・・」
「いつものことだから、気にすんな」
そっか、それが通常運転なのね。
あたしは構わずに亜貴の隣に座った。
「まず、昨日の曲のおさらい。昨日みたいに歌って」
「うん」
亜貴がベースを持ち直した。
昨日、祐兎が弾いてたギターパートを、
ベースで簡単に弾きはじめる。
自分のパートが出てきたところで、亜貴はベースに戻った。
あたしが歌う。
昨日よりもリラックスして歌えた。
アンプもつながない、小さな音と小さな声。
だけど誰もいない朝の屋上は涼しげで、
楽しくて、気持ちよかった。