LAST SMILE
第4章 ふさわしいあたし
*
歌い終わったあと、しんと静まり返った。
余韻だけが、スタジオ内に響く。
あたしはこの歌詞の通り、
男の心情を表せたかな?
みんな、さっきから何も言ってくれない。
やっぱり、ダメだった?
あたしじゃ、このバンドではやっていけない?
「あの・・・」
祐兎がため息に似た息をついた。
そんなに酷かった?
亜貴は褒めてくれたんだけど・・・。
やっぱり、ボーカルを預ける祐兎にとっては、
気に入らなかったかな?
あたしは軽くショックで、思わずうつむいた。
祐兎があたしに近付く。
「これ、次のライブで使う曲の音源」
「え?」
あたしはふっと顔をあげた。
そこには、
CDを手にぶらぶらと振った祐兎が立っていて、
その奥では、武田くんも磯部くんも、
にこっと笑っていた。
亜貴は小さく見えないようにVサインを出してくれて、
やっぱり苦笑していた。
「いい・・・の?」
「まぁ・・・お前はちっと腹立つ。せやけど・・・
ちょっと腹立つけどまあ許してやるよ」
出た。
また大阪弁。
てか、言い直したし。
こいつもちょっとはかわいいとこあんのかな?
なんて思ったり。
「ふーん。ま、まあ、あんたよりも上手に歌ってやるわ」
「あー?なんやて!?」
「ほら出たー!!」
「今のなし!ちょっ!!逃げんなこら!!」
小さなスタジオで走り回るあたし達を見て、
他の3人は小さく笑った。
本当に、こいつムカつく!!
・・・でも、ここのメンバーに、正式になったんだよね?
あたし、喜んでもいいんだよね?
今度は、今度こそはあたし、
本当のバンドをやれるんだよね?
ドラムじゃなくても、ここで、
ボーカルとして・・・。
「わっ!!おま・・・急にとまんなよ」
「・・・っごめん」
あたしは祐兎の手にしていたCDを受け取って、
胸の前で抱きしめるように持った。
それを見て亜貴が苦笑する。
なんか、出逢ってそんなに日もたってないけど、
あたし、この人たち好きかも。
この中でならあたし、
本当にずっと続けていけるかもしれないと思ったのは、
みんなにはまだ秘密だけど。