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LAST SMILE

第4章 ふさわしいあたし









歌い終わったあと、しんと静まり返った。


余韻だけが、スタジオ内に響く。


あたしはこの歌詞の通り、
男の心情を表せたかな?


みんな、さっきから何も言ってくれない。


やっぱり、ダメだった?


あたしじゃ、このバンドではやっていけない?




「あの・・・」


祐兎がため息に似た息をついた。


そんなに酷かった?
亜貴は褒めてくれたんだけど・・・。


やっぱり、ボーカルを預ける祐兎にとっては、
気に入らなかったかな?


あたしは軽くショックで、思わずうつむいた。


祐兎があたしに近付く。



「これ、次のライブで使う曲の音源」


「え?」




あたしはふっと顔をあげた。


そこには、
CDを手にぶらぶらと振った祐兎が立っていて、


その奥では、武田くんも磯部くんも、
にこっと笑っていた。


亜貴は小さく見えないようにVサインを出してくれて、
やっぱり苦笑していた。



「いい・・・の?」


「まぁ・・・お前はちっと腹立つ。せやけど・・・
 ちょっと腹立つけどまあ許してやるよ」


出た。
また大阪弁。

てか、言い直したし。



こいつもちょっとはかわいいとこあんのかな?
なんて思ったり。


「ふーん。ま、まあ、あんたよりも上手に歌ってやるわ」


「あー?なんやて!?」


「ほら出たー!!」


「今のなし!ちょっ!!逃げんなこら!!」



小さなスタジオで走り回るあたし達を見て、
他の3人は小さく笑った。


本当に、こいつムカつく!!



・・・でも、ここのメンバーに、正式になったんだよね?


あたし、喜んでもいいんだよね?


今度は、今度こそはあたし、
本当のバンドをやれるんだよね?


ドラムじゃなくても、ここで、
ボーカルとして・・・。




「わっ!!おま・・・急にとまんなよ」


「・・・っごめん」




あたしは祐兎の手にしていたCDを受け取って、
胸の前で抱きしめるように持った。


それを見て亜貴が苦笑する。


なんか、出逢ってそんなに日もたってないけど、
あたし、この人たち好きかも。



この中でならあたし、
本当にずっと続けていけるかもしれないと思ったのは、


みんなにはまだ秘密だけど。





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