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闇だ。

驚くほどに、深く果てしない。

走っても、走ってもそれは着いてくる。

あまりにも長くて、長すぎて、着いてきているのか先回りされているのかさえ分からなくなってくる。



息が上がる。
額に汗がにじむ。
両足が鉛のように重くて上手く前へ進んでいかない。


わたしは一体何から逃れようとしているのか。
それとも近付こうとしているのか？

何も分からない。
ただ、この場所にいてはいけない気がして。


とてつもなく大きな何かに背中を押されながら、ただ走り続けていた。





ーーぽたっ。



その時、不意に鼓膜を揺らす水音。
静まり返っていた空間には異質な"オト"が、響く。

そこでわたしはやっと足を止め、音の出処を探った。

目下の闇に目を凝らすと、一円玉大の水たまりがぼんやりと視界に映る。
深い深い黒に色素を吸い込まれ、その滴が何色をしているのかは到底分からない。