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Bloody Kiss

第1章 プロローグ

ただ、鼻腔を掠める僅かな匂いに、覚えがあった。
懐かしいような、泣きたくなるような、

錆びた鉄‥
けれど少し生暖かい‥


そうだ。


これは、


血の、匂いだ。













ージリリリリリ!



「莉子ー!何やってるのー⁈」

「!」



そこで急に意識は途切れた。
見慣れたベージュの飾り気のない天井がそこにはある。

あまりにも場面の切り替わりが急すぎて、わたしは思わず部屋の空気をいっぱいに吸い込んでみた。
さっきまで感じていたあの匂いは‥‥今は微塵も感じない。


「夢、か‥‥」

オーソドックスなセリフをため息と共に吐き出しながら、気だるい身体を起こす。
いつもはなかなか覚醒しない頭が、今日は嫌にすっきりとしていた。まるで、何かに怯えながらがむしゃらに走っていたことが、現実だったかのように。




「‥って、遅刻じゃん!」

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