未来の彼方
第1章 プロローグ。
☆
「「「誕生日おめでとう~!!」」」
爽快な破裂音が鳴り響いた、5月の連休明け。
教室のドアを開けると、そこには生徒達が待っていた。
20、30、40・・・。
小さな部屋に、大勢の人。
俺、小野寺拓海、28歳は
地元である田舎から離れた都心の公立高校で
数学の教師に就いて3年目のまだまだ新人教師。
そんな俺にとってサプライズをされるっていうのは慣れないもので。
けれどまだ成人もしていない子供にナメられてもいけない。
俺はこの状況に驚きながらも、教壇の前に静かに立った。
「あの・・・さ、俺の授業の生徒じゃない子もちらほらいるんだけど」
「みんなたぁくんの28歳、祝いたかったんだよー!?」
スカートの一際短い女生徒が、うじゃうじゃいる生徒を代表してそう言い放った。
そんな彼女に、俺はいつものように、にこりと笑い返す。
すると、生徒達が打ち合わせをしたかのように一斉に歌い始めた。
誕生日と言えば、そう。あの歌。
ていうか、みんな授業サボってない?
俺、確実に見付かったら怒られんなぁ・・・。
「はいはい。ありがとな。みんなの気持ちは嬉しいけど、
授業にはきちんと出なさい」
「「「えー!?」」」
もっとも教師らしい俺の言葉にブーイングの嵐が起こったとき、
鬼のような形相の教師達が教室へと入ってきた。
「小野寺先生!何やってるんですか!!」
「すいません、すぐに解散させますので・・・」
「これだから若い先生ってのは困るんですよ。
だいたい貴方は教師という自覚がですね―」
・・・。
教師っていうのは、
社会人っていうのは、
本当に疲れることばかりだ。
理不尽なことも多くて、いつも正しいことが正しくあるわけじゃない。
時には間違っていると思うことでも、
反論したいことがあっても、
目を瞑らなければいけないんだってことを覚えた、28の誕生日。
それでも俺は今日も、教師としての朝を迎えた。