未来の彼方
第2章 不穏な電話
☆
「小野寺先生、また西先生にいびられてたんですか?」
「あ、香織先生・・・。お疲れ様です」
保健室の養護教諭、須賀香織先生がため息をついた俺の隣に座った。
愚痴を言いたい気持ちをなんとか抑えて、俺は首を横に振った。
「俺がちゃんと生徒を注意できないのが悪いので、いいんですよ。
生徒と教師っていう関係性をきちんと保つことは大事ですしね」
「またまた。小野寺先生は優しいんですね」
「いえ。そんなことないですよ」
そう言い愛想笑いをすると、香織先生は綺麗に笑い返した。
そうして、思い出したようにはっとした表情をすると、
俺に向かって言った。
「そういえば!小野寺先生にお電話がありましたよ?」
「電話?」
「ええ。お名前を聞いたら切られちゃったんですけど・・・」
「はあ、そうですか」
電話??誰だよ。
学校にかけてくるやつなんて、知り合いにいたっけかな?
友達はみんなケータイにかけてくるだろうし・・・。
そんなことを考えていると、香織先生が声をあげた。
「でも、その人男の人だったんですけど、
“小野寺先生の番号はこれで違いはないか”って、そう聞かれましたよ?
だから私、そうですけどって答えたので、多分かけ直してくるんじゃないですか?」
男?
いや、女なら尚更おかしいんだけどさ。
本当に誰だろうか。
香織先生の言った“謎の男”が気になって、俺はしばらくずっと考えていた。