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漆黒の夢

第1章 きっかけ

『おーい。雄也ー』
最寄り駅に着くや否や、後ろから誰かが僕を呼んだ。
振り向くと、定年間際の中年男性が、息を切らし小走りで近寄ってきた。

『おはようございます、警視監。やけに朝から元気ですね。』

『ははは。これとだね…。』

中年男性は小指を立てた。

『嘘はいいです。また小さい事件を追って張り切ってるんでしょう。』

『ばれたか…。都内の中学で犯罪に近い、イジメがあるらしいんだ。しかも、噂じゃかなり陰湿に水面下でやられてるみたいだ。』

『…。教師は何を。』

『教師にはすごいいい子にしている子が加害者みたいなんだ。世は大臣とか言われる神童で、おまけに大企業の御曹司で美少年、運動神経抜群で楽器だってお手の物って奴みたいなんだ。』

『絵に描いたような理想の男ですね。コンプレックスとかなさそうな…。』

『何だ?コンプレックスあるの?』

そう中年男性に尋ねられて何も答えられなかった。

この中年男性とは、警視監の小高宗則、56歳だ。

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