テキストサイズ

君の瞳に映るもの

第2章 空白の時間

 零一の頬を包み、自ら引き寄せて舌を絡める。

 零一が一瞬、驚いた表情を浮かべるけれど、すぐに受け入れて応える。

「んんっ…んっ…んっ……」

 角度を変え、触れ合う唇と、絡まり合う舌。

 けれど、このままでは動きにくいと感じたのか、零一が離れ、また激しく動く。

「あっ、んんっ……れ…いち……っと、奥……あっ……」

 途切れ途切れに零れ出した声が自分のものではないような気がした。

 それは、私の意思のようで、私の意思ではないような。

 背中に腕を回し、零一の動きに合わせて動き出す、躯。

 頭が拒否している私には、考えられない行為だった。

 零一の顔を見上げると、急に冷えた表情と出会った。

「――お前、誰だ」

 音が歪んで、その行為の動きがスローに映って、私の意識は薄れていった。

 覚えているのは、射抜くような零一の眼差しだけ…――。





 

 

ストーリーメニュー

TOPTOPへ