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君の瞳に映るもの

第2章 空白の時間

 零一の腕を掴む手が背中に回り、引き寄せる。

「零一…――」

 不意に音が戻ってきて、耳に飛び込んだのは、吐息混じりに零一を呼ぶ、私の声だった。

 まさか。

 呼ぶはずのない名前を口にしたと気づいて、混乱に拍車がかかる。

 零一の躯が私に重なり、唇が重なる。

 それと同時。

 私の中で何かが溢れて零れた。

 何かが壊れた、という表現が正しいだろうか。

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